8月5日(日) スペシャルイベント デジタル漫画家サミット 開催新着情報 - リブロ | 池袋に本店を構える本屋
リブロ池袋本店で行われているうめ氏のデジタル原画展のスペシャル企画として、ひうらさとる氏、太田垣康男氏、うめ(小沢高広・妹尾朝子)氏を迎えてのクロストークが開催された。このイベント、告知当時に興味があったものの、すっかり忘れていて、開催当日にうめ氏のTwitterで気付き、リブロに連絡したところ、当日でも大丈夫とのことだったので、行ってきた。
メモをしていたら、結構な量になったので、せっかくだから公開する。デジタルツールによって省力化できるところは省力化し、そこで浮いた労力を面白い漫画を描くことに費やそうという強い熱意を感じたセミナーだった。参加した漫画家の方たちに感謝。
こういうイベントだと、男性が多いという印象があったが、女性が半分ぐらいで、ひうらさとる氏が参加していたからなのか、それとも漫画を描こうとする人は男性より女性の方が多いのだろうか…と気になった。漫画専門学校で講師をしている人を誘って行ったのだが、その人によれば、生徒の9割は女性だそうなので、特に不思議ではなかったとか。
作業のスタイル
- ■太田垣康男
- まとまった休みがとれたので、このタイミングしかないと思い、3D CGを勉強した
- ガンダムを作ってみたが、細か過ぎて、漫画には使えないと友人に言われてしまった
- モビルスーツの3Dモデルを作ったが、関節の可動範囲が狭いため、迫力あるポーズがとれない。手で描いた方がいい
- 指示する暇があったら自分で描いてしまう
- 可動しない固定モデルは3Dで作っている
- コミスタでLightwaveのデータを読み込んでいる
- ■ひうらさとる
- ペン入れはアナログ。仕上げはデジタル
- アシスタントは在宅してもらっている
- アシスタントとのファイル転送や打ち合わせにSkypeを使っている
- コミスタのクリップデータは便利
- クリップデータに折れた傘があったのには驚いた(小沢)
- デジタルのアシは2010年から
- 結構、感覚的な指示をしている
- デジタル臭さが出ると困る。アナログっぽさを出したい(小沢)
- ■うめ
- Google SketchUpは無料で使えるので3Dお試しに便利。仕事に使うのでプロ版を使っている
- (『大東京トイボックス』に登場するスタジオG3のオフィスの3Dモデルを見せながら)机などの大体のパーツはライブラリにある
- お城もあったりする。ただし平気でガンダムなどもあったりするので、権利関係に充分に注意して欲しい
- 家具関係はメーカー自身が出していることもあり大丈夫
- 細かくレンズ設定ができる
- 曲線は硬い感じがするので後から書き足す
- コミスタで作業するページには、作業注意というレイヤー表示してる
- PhotoshopのBridgeはファイルを開かなくても、レイヤーの構造がわかっして便利
- Adobe本社はAdobeジャパンからの要望をほとんど聞いてくれない。でも、回転表示機能は、日本ではPhotoshopをイラストに使う人が多いため、以前から要望しており、初めてAdobeジャパンの要望が届いたらしい
- バンクに使う背景は左右反転しても大丈夫なように
- 雲はパーツで作って組み合わせると、二度と同じものにはならない。レイヤーはモノクロだとうまく重ならないのでカラーを使う
- 使いまわしやすいよう背景には地平線をいれない(ひうら)
- 薄いトーンや集中線は縮小すると消えやすい(ひうら)
デジタル導入の経緯
- ■太田垣康男
- 『MOONLIGHT MILE』を連載する時に導入した
- 宇宙空間のベタを塗るのが面倒だった
- トーンの削りが再現できない
- 丸いグラデーションが欲しかったがなかった
- 欲しいエフェクトを使うためにデジタルを使った
- コミスタはアナログ感があった。最初に漫画を描いた時の楽しさを感じた
- 『MOONLIGHT MILE』はデジタルっぽさを恐れていないのがすごい。ガウスぼかしはデジタルっぽ過ぎるので使い所が難しい(小沢)
- 漫画で背景をぼかすのは難しい
- ゆうきまさみさんはしゃっしゃっとした線で描いて、背景のぼかしを表現している(妹尾)
- 映画っぽく考えている
- 秋葉原のUDXで行われたうめさんのデジタル漫画のセミナーに行った
- 私も行った(ひうら)
- 以前から薄墨を使いたかったが、印刷の問題で使えなかった。アシの時に薄墨を使おうとしたら、先生に怒られたので、先生が寝ぼけている時に、目立たないところにこっそり試したら真っ黒になってしまった
- オフセット印刷なら薄墨が使えたが、それは一部の作家しか使えなかった
- 網トーンで薄墨っぽさを使いたかった
- ■うめ
- 最初は小沢が書き文字のデータベースを作った
- 3Dは小物から始めた
- 『大東京トイボックス』で導入。最初はプリントアウトしたものをアシにトレスしてもらっていた
- デジタルは手抜きになるというが、漫画では同じことを繰り返すことが多い。そこを効率化できて、ネームなど他のところに時間をかけられる
- デジタル化すると、導入初期は「濃い」感じになる
※ひうら氏の話はメモを取っていなかった
フリートーク
- 実践で覚えるしかない。いつか覚えるという人は絶対覚えない。(小沢)
- 入稿について。出版社のサーバにドロップするだけ。ただし、今はログインできなくなってしまっている(ひうら)
- 単行本12巻辺りからCD入稿できた。その前はプリントアウトをいれていた(太田垣)
- 2004年にMOで入稿した。モーニングで初めてだった。製版所と打ち合わせしたが、作家がくるのは初めてだったらしく、製版所の偉い人が勢揃いしていた(小沢)
- 刷り上がるとモアレがでる
- 作業はグレースケール。入稿は二値化(太田垣)
- 作業解像度は1200dpi(うめ、太田垣)、600dpi(ひうら)
- カラーはCMYKで描いている(小沢)
- 他の作家がデジタルにしているかどうかが気になったり、わかる?(小沢)
- デジタルでの拡大縮小が面倒だった(ひうら )
- デジタルのほうが速い(妹尾)
- 妹尾は下描きで左右反転をよくしていたので、それがなくなったので、早くなったのではないか??(小沢)
- コミスタのGペンはひっかかりがない(太田垣)
- タブレットは砂消しみたいな芯があるのでそれを使っている(小沢)
- フェルトを使っているが、すぐ減る(ひうら)
- 入稿日はアシの作業待ちなので、以前と比べて余裕があるので、次の日からすぐ仕事ができる(ひうら)
質問
- ■編集さんにデジタルの作業の詳細を知ってもらいたいか?
- 新しいサービスを使おうとする時に渋い顔をされてしまうのは嫌。腰が軽いといいのに(小沢)
- 編集者は自分たちの職能に特化してくれればいい。コミスタの使い方を知ってなくてもいい(太田垣)
- ■デジタルでの失敗談
- モニターでの印象と印刷の違い。印刷しないとわからないことがある。拡大して細かく描こうと思えば描けるが、印刷だと印象が違うことがある(ひうら)
- Photoshopは一枚で見開きではないので、まったく同じコマ割りしてしまったことがある(妹尾)
- コミスタは個別にフォルダがあるのでコピーする時に抜け落ちことがあるので、圧縮したほうがいい(小沢)
- ■デジタルではできなくて、アナログでしかできないことはあるか?
- 筆ペンの乱れのような味がない(太田垣)
- ダメだと思った線からのリカバリーからには味があった(太田垣)
- アナログは失敗ができない
- 自分でアナログっぽさを出すためにUNDO禁止にするとか(小沢)
- アナログでは最初にイメージをしっかり作らないとできない。デジタルは、とりあえずで色を置いたりできる(太田垣)